2002 年 40 巻 2 号 p. 1-12
本研究の目的は,犯罪不安を喚起する諸要因を検討することである.先行研究において,日常生活のどのような場所で犯罪不安を感じているかを調査した.その結果,①見通しが悪くなるほど,他者の存在が減るほど,誰かが潜んでいそうな場所であるほど,自分が逃げられなさそうな場所であるほど不安が高くなる,②夜間では暗くなるほど不安が高くなる,③女性の方が不安を感じやすい,という傾向が明らかになった.そこで,我々は次のようなこつの実験を行なった.第一実験は,先行する研究と同様の場所の画像を用いて,犯罪不安の評価を行なった.その結果,先行研究と本実験の画像呈示とで,有意な相関であった(R=.67,pく.01).次の実験では,「この場所は犯罪多発地域である」という情報によって,犯罪不安に関する評価が影響されるかどうかを実験した.その結果,情報の有無に関わらず,環境要因による影響が強いことが示唆された.