犯罪心理学研究
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被害発生率および住民の犯罪不安,リスク認知の高い高層住宅団地の特徴―住構造および立地環境を中心に
小俣 謙二
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2009 年 47 巻 1 号 p. 59-73

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抄録

本研究は,高層住宅団地の防犯と安全にかかわる環境心理学的要因を明らかにすることを目的に,犯罪発生率,犯罪不安,リスク認知の高い高層団地の特徴を検討した。調査対象団地は56団地,回答者は成人女性である。その結果,以下の所見が得られた。1) 照明設備への住民の満足度が高いほど全犯罪の犯罪率,侵入窃盗・侵入の発生率が低い。2) 自転車盗難や車盗難などの乗り物に関する被害は立地場所の環境が整備されていない高層団地で多い。3) 性犯罪被害は郊外の,団地当たりの棟数が多い団地で多い。このように,犯罪発生率にかかわる要因は罪種によって異なることが見いだされた。一方,4) 犯罪不安やリスク認知には照明設備への満足度が強くかかわっていた。すなわち,不安場所数や夜間の不安は照明満足度を高めることで改善されることが結果からみてとれる。同様に,4罪種中3罪種のリスク認知にも照明設備への満足度が関係していた。こうした本研究の結果はさらに検討を要するが,今後のわが国での高層住宅への需要を考えると,住環境の防犯政策を考えるうえで重要な意味をもつものと考えられる。

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© 2009 日本犯罪心理学会
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