犯罪心理学研究
Online ISSN : 2424-2128
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原著
中学生の対教師暴力からの立ち直りプロセスに関する質的研究—家庭裁判所調査官による介入事例の分析—
室城 隆之
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2012 年 49 巻 2 号 p. 1-14

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抄録

本研究の目的は,対教師暴力から立ち直った中学生の体験を分析することによって,対教師暴力からの立ち直りプロセスモデルを構築することである。そのために本研究では,対教師暴力を起こした後に立ち直った9名の中学生のインタビュー・データを,質的研究の1つの手法であるM-GTAを用いて分析した。そして,その分析結果から,次のようなプロセスモデルが構築された。暴力を起こした後,暴力を振るった生徒たちは逮捕された経験を通して,自分が間違っていたことに気がつき,自分のしたことを後悔する。そして,立ち直ろうと努力するが,学習面でうまくいかずに挫折する。しかし,彼らはそれを家庭裁判所調査官の援助を受けることによって克服する。そして,このような支えられる体験を通じて,彼らの他者に対する認識はポジティブに変化し,また話し合って問題解決する力などの立ち直る力を獲得することで自己認識もポジティブに変化し,暴力を振るわずに生活できるようになる。そして,本研究はまた,彼らの教育,指導のためにどのようなサポートが有効であるかも明らかにした。

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© 2012 日本犯罪心理学会
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