2015 年 52 巻 2 号 p. 35-47
本稿では,特に大きな変化のあった性犯罪者の処遇を例に挙げて,ポジティブ心理学的アプローチが評価されてきた理由と,同アプローチに対する批判的見解の双方の視点から検証し,同アプローチを導入することの利点と注意点について考察した。犯罪者に対する責任や問題点の直面化を重視するという処遇方法には,進め方を誤れば犯罪者の自尊感情の低下を招いたり,処遇に対する動機付けを高めにくかったりするといった短所が少なくないが,ポジティブ心理学の観点が追加されることによってそうした短所を補うことができると見られた。ただし,ポジティブ心理学に対する批判は軽視できないことから,ポジティブ心理学的アプローチはあくまで既存の処遇の浸透性を高めるために補足的に使用することが望ましいと考えられた。