本研究では,印象操作への動機づけ,自己呈示目標,社会的視野の広狭といった自己呈示に関連する諸要因が集団場面での粗暴行為に及ぼす影響を検討した。調査対象者は,少年鑑別所収容中の男子少年194名(非行群)及び非行歴のない男子高校生204名(無非行群)であった。共分散構造分析を用いて検証した結果,無非行群では(a)虚勢的自己呈示目標は,粗暴行為に正の影響を与える,(b)順社会的自己呈示目標は,粗暴行為に負の影響を与える,(c)印象操作への動機づけは,虚勢的自己呈示目標に正の影響を与える,(d)印象操作への動機づけは,順社会的自己呈示目標に正の影響を与える,(e)独善・仲間内主義傾向は,虚勢的自己呈示目標に正の影響を与える,(f)他者視点の取得傾向は,順社会的自己呈示目標に正の影響を与えるという関連が確認された。一方,非行群においては(d)の関連は見られなかった。