2007 年 32 巻 6 号 p. 885-889
症例は56歳の女性で, 1年7カ月前に近医で上部消化管造影検査を受けた。腹部単純X線写真で骨盤内にX線不透過性の異物を認めたため, 当院を紹介された。腹部CT検査では直腸内異物も否定できなかったが, 下部消化管内視鏡検査で直腸内に異物を認めなかった。そこで医原性異物や腹腔内鼠などを疑い, 全身麻酔下に腹腔鏡下検査を施行した。腹腔鏡下に観察すると腹腔内には異物はなく, X線透視下の金属製鉗子による検索で直腸内異物と診断した。肛門を拡張後, 4 × 3 cm大のバリウム便塊を経肛門的に摘出した。上部消化管造影検査に用いられるバリウムは, 稀ながら便塊を形成して直腸内に長期間残存することがある。骨盤内にX線不透過性の異物を認めた場合にはバリウム便塊の可能性があり, 便塊を摘出する必要がある。