日本外科系連合学会誌
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症例報告
  • 五十嵐 洸, 渡邉 昌也, 佐藤 真輔, 西田 正人, 瀧 雄介, 大場 範行
    2023 年 48 巻 4 号 p. 459-464
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/08/31
    ジャーナル フリー

    症例は56歳,男性.4カ月前からつかえ感が出現し,徐々に食事摂取困難となったため近医受診した.食道腫瘍の診断で当科紹介となった.上部消化管内視鏡検査にて胸部下部食道に壁外性病変を認め,超音波内視鏡下穿刺吸引法によりgastrointestinal stromal tumor(以下,GIST)の診断となった.CTでは13㎝大の食道粘膜下腫瘍を認め,腫瘍は食道へ穿通していた.また多発肝転移を認めた.同時多発肝転移を伴う切除不能GISTと診断して,栄養経路確保のため胃瘻造設術を施行し,イマチニブ400mg/日内服開始した.11カ月後のCTで原発巣,肝転移巣の縮小を認め,また新規病変も認めなかったため,胸腔鏡下食道亜全摘出術,肝左葉切除術,尾状葉部分切除術を施行した.術後早期よりイマチニブ400mg/日の内服を継続し,術後3.5年無再発生存中である.

  • 近藤 昭信, 谷川 智美, 渡邊 大和, 市川 健, 奥田 善大, 田中 穣
    2023 年 48 巻 4 号 p. 465-470
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/08/31
    ジャーナル フリー

    症例は73歳男性.2014年5月当科初診.胃gastrointestinal stromal tumor(以下GIST)肝転移の診断にて術前イマチニブ内服6カ月後に胃部分切除術,脾合併膵尾部切除術,肝後区域切除術を行った.2020年2月に背部腫瘤を主訴に当科受診.造影CTにて左脊柱起立筋内に30mm大の腫瘤と近傍の背部皮下に15mm大の腫瘤を認めた.胃GISTの再発と診断し,イマチニブの内服を開始すると一時的に腫瘍は消失した.眼瞼浮腫などイマチニブの副作用もあり,一旦休薬すると脊柱起立筋内の腫瘍の再燃を認めたが,画像上は他の部位に転移は認めず,2021年7月に周囲皮膚組織を含めて切除を施行した.最終病理診断では胃GIST脊柱起立筋転移と診断した.2回目手術後イマチニブ内服を継続し,術後1年7カ月無再発生存中である.胃GISTの骨格筋転移は非常に稀であり,文献的考察を加え報告する.

  • 星 勇気, 五十嵐 高広, 石井 智, 田村 光
    2023 年 48 巻 4 号 p. 471-476
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/08/31
    ジャーナル フリー

    症例は91歳女性.87歳時にS状結腸穿孔に対してHartmann手術を施行された.改善しない腹痛,嘔吐のため,当院に救急搬送された.CT検査にて人工肛門周囲皮下に便塊の貯留を認め,人工肛門部の結腸穿孔と診断し緊急手術を施行した.術中所見で人工肛門部の腹直筋前鞘から2cm末梢に穿孔部位を認め,皮下組織に便貯留による膿瘍を形成していた.末梢側の壊死腸管を切除した後,ドレナージおよびデブリードマンを行い,残った腸管を皮膚と縫合することで,ストーマサイトを新たに造設することなく,再度単孔式の結腸人工肛門を造設することが可能であった.術後経過は良好で,人工肛門の色調不良や脱落なく経過している.人工肛門造設後に人工肛門部の腸管が穿孔をきたすことは稀である.今回われわれは人工肛門部の結腸穿孔を発症するも大きな術後合併症なく救命しえた1例を経験したため,文献的考察を加えて報告する.

  • 船水 尚武, 小川 晃平, 浦岡 未央, 本庄 真彦, 田村 圭, 坂元 克考, 髙田 泰次
    2023 年 48 巻 4 号 p. 477-482
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/08/31
    ジャーナル フリー

    症例は58歳,男性で14カ月前に肝門部領域胆管癌に対して肝切除術の既往があった.心窩部痛を主訴に前医を受診した.心電図で狭心症が疑われ,冠動脈造影CTを行ったところ左前下行枝(#7)に90%の狭窄を認めたため,入院となり,緊急で経皮経冠動脈インターベンションが施行され,薬剤溶出性ステントが留置された.翌日に下血を認め,緊急上部内視鏡検査が行われた.十二指腸球部後壁に潰瘍を認め,出血に対して焼灼術が行われた.その2日後に再度内視鏡検査が施行され,止血を確認し抗血小板薬の内服を開始となった.その5日後に下血を認めたため内視鏡検査を施行すると同部位から噴出性の出血がみられ,クリップによる止血が行われた.再出血のリスクを考慮し,当科に救急車で転院となった.搬送中に再出血しショック状態となり,ポンピングをしながら来院となった.輸血により血圧が安定したところで腹部造影CTを施行したところ,固有肝動瘤破裂が疑われ,緊急IVRを施行した.同部位に血管ステントを留置し止血が得られた.十二指腸潰瘍に合併した固有肝動脈瘤は稀であるため,文献的考察を加えて報告する.

  • 石川 亜美, 林 浩二, 中山 史崇, 方宇 慶蒼, 門野 政義, 成松 裕之, 櫻井 馨士, 谷 紀幸
    2023 年 48 巻 4 号 p. 483-489
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/08/31
    ジャーナル フリー

    83歳,男性.進行直腸癌に対し腹腔鏡下直腸切断(Hartmann式人工肛門造設)術後1年目に,肛門側切除断端の局所再発,左閉鎖リンパ節転移,および骨盤内腹膜播種結節を認めた.放射線照射を施行したが小腸閉塞を繰り返し発症,最終的に保存的には改善せず小腸バイパス手術を行った.術後疼痛管理のためアセリオ®を術当日に1,000mg,術後第1,2病日に各4,000mg使用したところ,第3病日にAST 5,772U/L, ALT 4,463U/L, PT-INR 12.9と非昏睡型急性肝不全をきたした.血清アセトアミノフェン濃度が46µg/mLと比較的高値であったため,アセリオ®による薬物中毒としてN-acetylcysteine投与と血液吸着療法,人工肝補助療法として血漿交換療法とon-line HDFを開始した.第5病日以降諸検査値は改善し,第8病日にAST 77U/L, ALT 396U/L, PT-INR 1.39と肝不全を脱し,第16病日に自宅退院となった.術後疼痛管理目的に使用したアセリオ®による薬物中毒のため急性肝不全を認めたが,早期の集学的治療介入により全身状態が重症化することなく短期間で改善した1例を経験した.

  • 久保田 亮人, 大町 貴弘, 鈴木 衛, 水崎 馨
    2023 年 48 巻 4 号 p. 490-495
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/08/31
    ジャーナル フリー

    症例は76歳,男性.食後の腹部違和感と肝機能障害を指摘され当院へ紹介となった.右胸心は中学生の時の心電図異常で指摘され胸部X線撮影で判明していた. CTでは完全内臓逆位症を呈し,胆囊壁の軽度肥厚と軽度の胆管拡張が認められた.Drip Infusion Choleystocholangiography(DIC-CT)において胆囊総胆管結石が明らかとなった.手術は腹腔鏡下胆囊摘出・総胆管切石術,Cチューブドレナージを行った.術者は患者の右側に立ち,上腹部右側12mm,左側腹部12mm,臍部の3ポートで手術を施行した.手術時間は105分,出血は3gであった.手術は内臓逆位で鏡面像であった以外に特に煩雑な手技を必要としなかった.術後経過は良好で術後第7病日に退院した.

    完全内臓逆位症を合併した総胆管結石症に対する腹腔鏡下手術は少なく,本症例で本邦報告2例目であった.

  • 杉谷 麻未, 末永 雅也, 山家 豊, 羽田 拓史, 梅村 卓磨, 木部 栞奈, 竹田 直也, 田嶋 久子, 片岡 政人, 竹田 伸
    2023 年 48 巻 4 号 p. 496-503
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/08/31
    ジャーナル フリー

    症例は78歳男性.右上腹部痛に対する精査で肝膿瘍を疑われて当院へ紹介となった.腹部CT検査で肝前区域に14 cm大の囊胞性病変を認め,軽度腫大する胆囊と連続していた.腹部超音波検査で囊胞性病変は肝被膜下に存在し,胆囊頸部には結石を認めた.肝被膜下膿瘍を合併した急性胆囊炎と診断したが,胆囊炎と既往疾患により全身状態不良であったことから緊急手術を回避する方針とした.経皮経肝胆囊ドレナージと肝被膜下膿瘍に対する経皮的膿瘍ドレナージを施行し,全身状態の改善を待って腹腔鏡下胆囊摘出術を施行した.術中所見で胆囊体底部周囲の炎症は高度であったが,肝被膜下膿瘍への瘻孔を切離して胆囊を摘出した.縮小した肝被膜化膿瘍を開窓し,ドレーンを留置して手術を終了した.術後経過は良好で術後第8病日に退院した.肝被膜下膿瘍を合併した急性胆囊炎は比較的稀な発症形式であり開腹術を施行した報告が大半であるが,腹腔鏡下手術も治療選択肢となりえる.

  • 藤林 勢世, 佐藤 悠太, 田中 善宏, 浅井 竜一, 松橋 延壽
    2023 年 48 巻 4 号 p. 504-509
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/08/31
    ジャーナル フリー

    抗癌剤に起因する薬剤性膵炎の発症頻度は非常に低い.症例は72歳の男性で,胸部中部食道癌cT4a, cN1, cM0, cStage Ⅲ(食道癌取扱い規約第11版)の診断で,術前化学療法としてbiweekly docetaxel, cisplatin, 5-fluorouracil(Bi-DCF)療法を導入した.Day5に強い心窩部痛が出現し,膵酵素の上昇およびCTで膵頭部に限局した炎症所見を認め,急性膵炎と診断した.胆石やアルコールなどは原因として否定的であり,化学療法を契機として発症した薬剤性膵炎と診断した.抗癌剤投与を中止し内科的加療を行い軽快した.膵炎再燃のリスクを考慮し化学療法は再開せずDay22に胸腔鏡下食道亜全摘術を施行した.胃周囲の癒着は軽度で通常通りの胃管再建が可能であった.Bi-DCF療法を契機に発症した急性薬剤性膵炎後に,根治的切除した食道癌症例を経験したため報告する.

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