日本外科系連合学会誌
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症例報告
  • 福尾 飛翔, 小川 雅生, 安田 拓斗, 奥村 哲, 豊田 翔, 濱野 玄弥, 山本 堪介, 川崎 誠康
    2024 年49 巻6 号 p. 493-499
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/12/31
    ジャーナル フリー

    症例は80歳,男性.絞扼性イレウスに対して腹腔鏡下に大網を切離し絞扼解除を施行したが,術後5日目に上腹部痛を認めた.腹部造影CT(computed tomography)検査で十二指腸付近に膿瘍を疑う液貯留を認め試験開腹術を施行した.Treitz靭帯より70cm肛門側の小腸に穿孔を認め,穿孔部位を含め小腸を20cm切除し,Treitz靭帯より60cm肛門側の小腸で単孔式小腸ストーマを造設した.術後,経口摂取を開始したがストーマ排液は増加したため,経口摂取を継続するための工夫としてストーマ排液を直接腸瘻より投与した.手技を確立した上で,補液をせずに栄養状態も保つことができ自宅退院した.退院後,人工肛門閉鎖術を問題なく施行することができた.小腸ストーマによる短腸症候群に対して,ストーマ排液を直接腸瘻から投与することで経口摂取を継続させながら補液なしに人工肛門閉鎖まで栄養状態を維持できた症例について報告する.

  • 林 啓一, 佐藤 正規, 佐藤 将大
    2024 年49 巻6 号 p. 500-505
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/12/31
    ジャーナル フリー

    症例は55歳女性.肛門から脱出する腫瘤,疼痛を主訴に当科を受診した.用手的還納は不可能であり,CT検査で脂肪成分を含む腫瘤による直腸腸重積の診断となり,緊急手術を施行した.直腸の重積はHutchinson手技では解除されず,腸重積のまま検体を切除すべく直腸を剝離中,先に切離した口側腸管の断端がさらに直腸内に引き込まれ,肛門から体外へ完全に翻転,脱出し腸重積が解除された.会陰部で腸管を切除した後,脱出腸管を腹腔内に戻し腸管吻合を行った.切除検体は肉眼的に表面平滑で,境界明瞭な75×55mm大の腫瘍であり断面は黄色調であった.病理組織学的には粘膜下層から漿膜下層に成熟脂肪細胞の増性を伴う腫瘤を認め,悪性所見は認めなかった.医学中央雑誌で検索した結果,肛門部に腫瘤脱を認めたS状結腸脂肪腫の報告は,本邦では自験例を含め12例の報告を認めるのみであり,文献的考察をふまえ報告する.

  • 青木 一浩, 小野 千尋, 杉田 久記, 出口 善純, 安藤 正幸
    2024 年49 巻6 号 p. 506-511
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/12/31
    ジャーナル フリー

    症例は70歳代,男性.便秘,腹部膨満を主訴に受診し,腹部CTでS状結腸腫瘍,多発性肝腫瘍を認めた.切除不能進行大腸癌の診断で横行結腸人工肛門造設術を行い,術中大腸内視鏡での生検で神経内分泌癌(Neuroendocrine carcinoma:NEC)と診断した.膵・消化管神経内分泌腫瘍診療ガイドラインに基づき,イリノテカン+シスプラチン療法を導入した.計5コース行ったが病状は進行し初診より7カ月で原病死した.遠隔転移を伴う消化管NECは極めて予後不良で,抗腫瘍薬の選択については小細胞肺癌に準じたプラチナ系薬剤を含む併用療法が推奨される.現時点で薬剤選択に関しては2次治療含めて確立されたものはなく,症例の集積と検討が必要である.今回われわれは多発性肝転移を伴ったS状結腸神経内分泌癌に対し集学的治療を行った1例を経験したので報告する.

  • 北島 政幸, 清水 咲花, 牧野 有理香, 岸根 健二, 永易 希一, 中谷 晃典
    2024 年49 巻6 号 p. 512-515
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/12/31
    ジャーナル フリー

    直腸癌術後の直腸膣瘻は比較的稀な合併症であるが,難治性となり,観血的治療が必要となることが多い.今回われわれは直腸癌術後の直腸膣瘻に対し,エストリオール膣錠を投与し治癒した1例を経験した.

    症例は70代,女性.直腸癌(Rb)に対し腹腔鏡下低位前方切除術および一時的回腸瘻造設術を施行した.術後は良好に経過し退院.術後補助化学療法を行った後,回腸瘻閉鎖を予定し注腸検査を施行したところ,直腸膣瘻を認めた.また,同時に施行したCT検査で肺転移の診断を得た.肺転移の手術を優先し,直腸膣瘻に対しエストリオール膣錠を開始した.肺転移の手術後に再度注腸検査を施行し,瘻孔の消失を認めた.エストリオール膣錠は閉経後の膣自浄作用の回復や子宮・膣周囲の血流増加による炎症抵抗性の増強,筋層の肥厚促進などの作用を有し,瘻孔の自然治癒を促進する可能性があり,直腸膣瘻の治療に対し第一選択肢とする意義があると考えられる.

  • 中村 明弘, 髙橋 裕季, 松尾 憲一, 茂呂 浩史, 田中 邦哉
    2024 年49 巻6 号 p. 516-524
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/12/31
    ジャーナル フリー

    Solid pseudopapillary neoplasm(SPN)との鑑別が困難であった石灰化を伴う膵単純性囊胞の1例を経験した.症例は49歳女性,腹部膨満感と背部痛を主訴に前医を受診し,CT,EUSにてSPNが疑われ精査加療目的に当院紹介受診した.腹部造影CTで膵尾部に辺縁石灰化を伴う境界明瞭な囊胞性病変を認め,MRIのT1強調像で内部不均一な低信号を示し,EUSで囊胞性病変と膵管との交通は明らかでなく主膵管の拡張も認めなかった.カラードプラでは囊胞内部に血流信号を認めた.以上からSPNを疑い,腹腔鏡下脾臓合併膵体尾部切除を施行した.病理組織所見では異形に乏しい単層の扁平上皮に被覆された囊胞であり,石灰化を伴う線維性の囊胞壁を有し,偽乳頭状増殖は認めず,単純性囊胞と診断した.石灰化を伴う膵単純性囊胞は稀な疾患であり診断に苦慮することがある.膵囊胞性疾患のうち非腫瘍性真性囊胞の分類の明確化と疾患名の統一が,本疾患の鑑別,およびさらなる病態解明に必須であると考えられた.

  • 三井 範基, 山田 誠, 丹羽 真佐夫, 棚橋 利行, 八幡 和憲
    2024 年49 巻6 号 p. 525-531
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/12/31
    ジャーナル フリー

    Nuck管水腫に対する手術は鼠径部切開法による手術に始まり,近年は腹腔鏡手術の報告もみられる.当院は鼠径部切開法を基本とするが,腹腔鏡観察下に鼠径部切開法で切除した症例を2例経験した.症例1は47歳女性.右鼠径部にCTで囊胞状の病変があり,Nuck管水腫が疑われた.腹腔鏡では内鼠径輪部とその近傍に飛び石状に病変を認めた.症例2は37歳女性.左鼠径部に超音波検査で鼠径ヘルニアを疑われた.腹腔鏡では左内鼠径輪に腹腔側に突出する暗紫色の囊腫を認め,Nuck管水腫が疑われた.いずれの症例も腹腔鏡観察下に鼠径部切開法で病変の損傷なく切除した.Nuck管水腫は遺残部からの再発や子宮内膜症の合併,稀に腺癌の報告があり,水腫を損傷せずに切除すべきである.完全腹腔鏡下での報告もみられるが,やや高度な技術を要する点,妊孕性の温存を希望される患者への配慮の点から,腹腔鏡観察下に鼠径部切開法での切除は安全な手段の一つと考えられた.

  • 武藤 靖英, 清水 誠仁, 原 仁司, 宮田 量平
    2024 年49 巻6 号 p. 532-538
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/12/31
    ジャーナル フリー

    症例1は58歳,男性.左鼠径部の膨隆を主訴に当科を受診した.CT検査で内鼠径ヘルニアを疑われ腹腔鏡下ヘルニア修復術を施行した.左外膀胱上窩ヘルニアおよび左外鼠径ヘルニアと術中診断された.症例2は55歳,男性.右鼠径ヘルニアの手術歴があった.両側鼠径部の膨隆を主訴に当科を受診した.CT検査で右内鼠径ヘルニア再発と左外鼠径ヘルニアを疑われ腹腔鏡下ヘルニア修復術を施行した.右内鼠径ヘルニア再発,左外膀胱上窩ヘルニアおよび左外鼠径ヘルニアと術中診断された.左内側臍ヒダより内側にヘルニア門が位置する外膀胱上窩ヘルニアは本邦の報告例が少なく稀であり術前診断は困難である.外膀胱上窩ヘルニアは腹腔鏡下手術により,従来の前方アプローチと比較して正確な術中診断と治療が可能になった.外膀胱上窩ヘルニアは他の鼠径部ヘルニアの合併も多く,腹腔鏡下手術は確実な術中診断,治療に有用と考えられた.

  • 古賀 千絢, 鈴木 陽三, 野間 俊樹, 萩原 清貴, 山下 雅史, 柳本 喜智, 池永 雅一, 清水 潤三, 川瀬 朋乃, 今村 博司
    2024 年49 巻6 号 p. 539-544
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/12/31
    ジャーナル フリー

    症例は89歳,女性.鶏卵大までに膨隆する右鼠径部腫瘤を主訴に11年間で計3回当院外来を受診し,理学所見・CTで鼠径部囊胞の診断で経過観察されていた.継続する腹痛と嘔気・嘔吐を主訴に救急外来を受診し,理学所見上右大腿部に緊満し還納不能な膨隆を認め,CTで右大腿管に脱出する小腸を認めたことから右大腿ヘルニア嵌頓と診断し緊急手術を行った.単孔式腹腔鏡下ヘルニア嵌頓解除術で嵌頓を解除し,嵌頓小腸が壊死していたため小腸部分切除術を追加した.その後,二期的に単孔式腹腔鏡下全腹膜前到達腹膜前大腿ヘルニア修復術を行い,現在,無再発経過中である.鼠径部囊胞の診察・診断は未治療大腿ヘルニア囊が含まれ得ることを念頭に慎重に行うことが肝要で,大腿ヘルニアの可能性が高いと判断した際には可及的速やかに待機的手術を行うことが望ましいものと考えられた.

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