抄録
背景:乳癌のセンチネルリンパ節生検(SLNB)は,腋窩リンパ節(ALN)転移診断法として広く普及している。T1症例では無病生存率(DFS)や全生存率(OS)への影響はないと報告されているが,T2症例では十分検討されていない。T2症例でのDFSとOSを検討した。
対象と方法:2000年1月~2007年3月までに,SLNBが可能であった546例のうち,術前T2浸潤性乳癌と診断し,SLNBで,ALN転移陰性(pN0)であった,SLNB-T2群:195例と,同時期に腋窩リンパ節郭清(ALND)でpN0であった,72例のうち,術前T2浸潤性乳癌と診断したALND-T2群:57例を比較対象とした。この両群の背景因子(年齢,閉経状況,腫瘍径,ホルモンレセプター,病理学的分類,補助療法の内容)と,上肢浮腫・知覚異常の合併症とDFS,OSについて解析した。
結果:各群間で背景因子に差はなかった。DFS(6年)は,SLNB-T2群:90.7%,ALND-T2群:83.1%と差はなかった。OS(6年)は,SLNB-T2群:99.4%,ALND-T2群:94.0%と差はなかった。術後合併症はSLNB群で有意に少なかった。
結論:T2症例でも,SLNBによりpN0と診断し,ALNDを省略しても予後は悪化せず,術後合併症は少なかった。SLNBはaxillary staging法として,安全で有用である。