日本外科系連合学会誌
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原著
リンパ節転移陰性T2乳癌においてセンチネルリンパ節生検に基づく腋窩リンパ節郭清省略は可能か-腋窩リンパ節郭清群との累積生存率の比較-
中嶋 啓雄藤原 郁也阪口 晃一水田 成彦鉢嶺 泰司中務 克彦市田 美保
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2008 年 33 巻 1 号 p. 1-7

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抄録
 背景:乳癌のセンチネルリンパ節生検(SLNB)は,腋窩リンパ節(ALN)転移診断法として広く普及している。T1症例では無病生存率(DFS)や全生存率(OS)への影響はないと報告されているが,T2症例では十分検討されていない。T2症例でのDFSとOSを検討した。
 対象と方法:2000年1月~2007年3月までに,SLNBが可能であった546例のうち,術前T2浸潤性乳癌と診断し,SLNBで,ALN転移陰性(pN0)であった,SLNB-T2群:195例と,同時期に腋窩リンパ節郭清(ALND)でpN0であった,72例のうち,術前T2浸潤性乳癌と診断したALND-T2群:57例を比較対象とした。この両群の背景因子(年齢,閉経状況,腫瘍径,ホルモンレセプター,病理学的分類,補助療法の内容)と,上肢浮腫・知覚異常の合併症とDFS,OSについて解析した。
 結果:各群間で背景因子に差はなかった。DFS(6年)は,SLNB-T2群:90.7%,ALND-T2群:83.1%と差はなかった。OS(6年)は,SLNB-T2群:99.4%,ALND-T2群:94.0%と差はなかった。術後合併症はSLNB群で有意に少なかった。
 結論:T2症例でも,SLNBによりpN0と診断し,ALNDを省略しても予後は悪化せず,術後合併症は少なかった。SLNBはaxillary staging法として,安全で有用である。
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© 2008 日本外科系連合学会
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