2010 年 35 巻 5 号 p. 754-759
症例は77歳,男性.食欲不振,嘔吐を主訴に近医を受診,上部消化管内視鏡検査で胃結腸瘻を伴う胃癌と診断され,当科に紹介された.上部消化管造影検査およびCT検査で,胃結腸瘻および多発肝転移,脾臓転移,腹膜播種転移を伴う胃癌と診断した.根治切除不能,経口抗癌剤投与は不可能と判断し,docetaxel + cisplatin + 5-FU(DCF)療法を施行した.1コース終了後に肝転移巣の縮小,2コース終了後に原発巣の縮小と胃結腸瘻の閉鎖を認め,経口摂取が可能となり,3コース終了後に退院した.胃結腸瘻および多発肝転移,腹膜播種転移を伴う胃癌に対してDCF療法を施行し,瘻孔の閉鎖とQOLの改善を得た症例を経験したので報告した.