2010 年 35 巻 6 号 p. 899-903
原発不明未分化腺癌の再燃に対し,サイトケラチン染色を参照して化学療法を施行し,寛解,再燃を繰り返し長期生存している1例を報告する.症例は63歳,女性.盲腸腫瘍が疑われ当科に入院,回盲部嚢胞性腫瘍とDouglas窩に多発する結節性病変を認め,手術(回盲部切除術,大網切除術,子宮全摘出術,両側付属器切除術,低位前方切除術)を施行した.病理組織検査では未分化腺癌で,CK7+/CK20-から卵巣,子宮内膜由来と考えたが,これらの臓器に原発病変はなく,原発不明未分化腺癌と診断した.術後6カ月で腹腔内に再燃し,卵巣癌に準じてTJ療法を施行してCRを得た.その後2回の再燃に対して同療法でいずれもCRが得られ,術後6年近く経過した現在,維持療法は行わず経過観察している.本症例ではTJ療法が奏効したが,CR後から再燃までの間に補助療法や維持療法は行っておらず,このような症例に対する治療方針は今後の検討課題と考えている.