抄録
症例は86歳,女性.2004年3月下旬より食欲低下,4月上旬には腹部膨満感が出現したため,当院消化器内科を受診した.腹部CTで上行結腸腫瘍によるイレウスと診断され,緊急入院となった.入院後経肛門的イレウス管を留置し,腹部症状は改善したが,挿入2日目に腹痛が出現した.イレウス管を抜去したが,症状の改善はなかった.腹部CTで腹腔内遊離ガスを認め,消化管穿孔と診断し,緊急で結腸右半切除術を施行した.2型2/3周性の上行結腸癌と共に,盲腸に径5mmの穿孔部を認めた.術後経過は良好で,術後16日目に退院となった.
経肛門的イレウス管留置は,大腸癌イレウスに対する待期的な1期的手術を可能とすることから頻用されているが,イレウス管による穿孔の危険性に留意する必要がある.良好な腸管減圧が得られた際には,可及的速やかな外科治療とイレウス管の抜去が必要であると考えられた.