2011 年 36 巻 2 号 p. 203-207
症例は72歳,男性.発熱,皮膚の黄染を認め,平成21年12月当院を受診した.右季肋部に圧痛を認めた.腹部造影CTで肝内胆管の拡張を認め,中部胆管に造影効果のある胆管壁肥厚を認めた.また,腎動脈下に最大径52mmの腹部大動脈瘤を認めた.ERCで,総胆管に約2cmの両側性狭窄像を認め,生検で中分化腺癌と診断された.腹部大動脈瘤合併中部胆管癌と診断し,腹部大動脈瘤は周術期に破裂の危険があるため,ステントグラフト内挿術を先行し,その術後22日目に胆管癌に対して,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.周術期に心血管系合併症は認めなかった.消化器悪性腫瘍と腹部大動脈瘤が合併し,どちらも手術適応である時には治療方針決定に苦慮する場合がある.本症例は,ステントグラフト内挿術を先行することにより,短期間で胆管癌に対する二期的手術が安全に施行可能であった.