2012 年 37 巻 4 号 p. 820-825
症例は71歳,女性. 既往歴は51歳時に子宮頸癌(扁平上皮癌)に対する広汎子宮全摘術および術後放射線療法(50Gy)が施行された. 14年後(65歳時)に直腸癌(中分化腺癌)に対し高位前方切除術を施行され,術後5年間無再発であった.今回,子宮頸癌治療後20年目に下腹部正中に皮膚の発赤および掻痒感が出現した.腹部骨盤CT検査で同部の皮下から腹直筋にかけて7cm大の腫瘤が認められた.生検組織の病理診断は低分化腺癌の疑いであったため,直腸癌の腹壁再発としてmFOLFOX6およびCPT-11による化学療法が施行された.治療効果がPDであったため,生検組織の免疫組織学的検査による再検討を行ったところ,ビメンチンのみ陽性で未分化な肉腫と診断された.その後アドリアマイシンによる化学療法が行われたが,皮膚症状出現後1年4カ月後に死亡した.今回,子宮頸癌治療後に放射線誘発と考えられた直腸癌および腹壁肉腫の1例を経験したので文献的考察を加え報告する.