2012 年 37 巻 5 号 p. 946-950
症例は67歳の男性.40年前より嚥下困難を自覚,20年前には食道アカラシアの診断を受けるも放置していた.今回,健診で異常を指摘され,精査加療目的に当院紹介となった.食道X線造影検査よりSigmoid type,Grade Ⅱ(最大拡張径44mm)の食道アカラシアと診断した.上部消化管内視鏡検査において切歯列から約30cmの部位にヨード染色にて不染を示す10mm大の0-Ⅱc病変を認め,病理結果より高分化型扁平上皮癌の診断となった.超音波内視鏡検査では第2層にとどまる低エコー病変を認め深達度T1a-LPMと診断した.食道癌に対する治療を優先し内視鏡的粘膜下層剝離術を施行,病理はT1a-LPMの食道表在癌であり,根治的治療と判断した.その後,食道アカラシアに対して腹腔鏡下Heller-Dor手術を施行した.現在,再発なく経過観察中である.文献的考察を加え報告する.