2013 年 38 巻 5 号 p. 1042-1046
症例は81歳,男性.嘔気,嘔吐を主訴に外来を受診した.腹部症状が軽く,CT検査以外の各種検査で,明らかな異常を認めていなかった.腹部CT検査では右側結腸内に陥入した小腸像と,さらに右下腹部にloop状の小腸の腸管壁肥厚を認め,上行から横行結腸にかけての腸重積および絞扼性イレウスの診断で緊急手術を施行した.手術所見で,重積により拡張した大腸と回盲部近傍での小腸軸捻転を認めた.重積の先進部を上行結腸まで整復した後,捻転した小腸を含めた右結腸切除術を施行した.標本には器質的病変は存在せず,回腸が約30cmに渡り出血性壊死を呈していた.本症例は移動性盲腸に起因する特発性腸重積と二次性小腸軸捻転と考えられた.成人腸重積のほとんどが器質的疾患を伴い,特発性は稀な1例であり,さらに小腸軸捻転を合併した報告は極めて少ない.