2014 年 39 巻 4 号 p. 627-633
食道癌切除後の乳糜胸は,比較的稀な合併症であるが,確立された治療法がなく,管理に難渋することが多い.従って,適切な管理ができない場合には死亡することも稀ではない.乳糜胸の一般的な原因は,手術操作による胸管損傷であるので,胸管結紮が最も確実な方法と考えられる.しかし,不必要な再手術は避けるべきであり,症例ごとに病態を把握して,適切な治療を選択することが必要である.食道癌術後の乳糜胸治療として,保存的療法,胸膜癒着療法,リピオドールを用いたリンパ管造影,放射線照射,胸膜腹膜シャント術,インターベンショナル,開胸手術,胸腔鏡下手術などが行われているが,胸管損傷の部位,程度,胸管の走行,乳糜胸水の量,患者の病態や全身状態などを考慮し,適切な治療を適切な順序で行う必要があると考える.