抄録
非アルコール性脂肪肝炎から発生した原発性肝細胞癌に対し,右肝切除施行術後,術後Wernicke脳症を発生した症例を経験した.症例は62歳男性で糖尿病,睡眠時無呼吸症候群で治療中であった.術後呼吸不全に陥り気管切開を施行した.術後高カリウム血症,高血糖のため1号輸液を中心に輸液を行った.術後33病日より経口摂取を開始したが,第43病日より失見当識障害,運動失調をきたした.頭部MRI T2拡散画像で中脳水道,第3脳室に沿った視床内側に左右対称性に高信号領域を認め,Wernicke脳症と診断した.直ちにビタミンB1を投与し速やかに改善した.術後ビタミンB1補充不足に加え,糖尿病,高血糖に対するインスリン負荷が糖代謝を亢進しWernicke脳症をきたしたと考えられ教訓的な症例であった.