抄録
症例は69歳,女性.3カ月前から水様性下痢を認め,めまいも自覚したため当院を受診した.初診時Na133mEq/l,K2.4mEq/l,Cl 84mEq/lと電解質異常,BUN34.5mg/dl,Cre1.3mg/dlと脱水を認め,精査加療目的に入院となった.大腸内視鏡検査で直腸に全周性の絨毛腫瘍を認め,生検では管状腺腫であった.CT検査では直腸内部に不整な隆起性病変を認め,その肛門側に液体が貯留していた.絨毛腺腫からの粘液分泌によるElectrolyte depletion syndrome(EDS)と診断し,電解質,脱水を補正後,腹腔鏡補助下低位前方切除術を施行した.切除標本では128×142mmの全周性腫瘍で,病理組織学的に絨毛腺腫,一部高分化型腺癌と診断された.術後,下痢症状,電解質異常は速やかに改善した.EDSを呈する絨毛腺腫は比較的稀な疾患であり,若干の文献的考察を加え報告する.