抄録
症例は64歳,男性.中学生時に内臓逆位を指摘されていた.61歳時に胃癌手術を受けた際,膵頭部囊胞性病変を指摘され経過観察とされていたが,増大傾向にあるため当科紹介となった.精査にてIntraductal papillary-mucinous neoplasm(IPMN)と診断し,膵頭十二指腸切除術(Child変法再建)を施行した.術前にCT,MRI,3D-シミュレーションを行うことで,内臓逆位症に合併の頻度が高いとされる血管変異のないことを確認し,また解剖学的構造を把握することができ,通常手術と同様に安全に手術を遂行することが可能であった.術後経過は良好で,術後35病日に退院となった.今回われわれは完全内臓逆位症に合併したIPMNに対して膵頭十二指腸切除術を行った1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.