2016 年 41 巻 1 号 p. 116-120
症例は79歳女性,68歳時に胆囊結石を指摘された.77歳時,総胆管結石による胆管炎で当院受診.その時施行された腹部CT検査にて総胆管結石と,門脈血栓症による門脈左枝の閉塞,そして肝左葉の萎縮を認めた.抗凝固療法と経十二指腸乳頭括約筋切開術および切石術を施行したが門脈閉塞は残存した.経過観察のため施行した腹部CT検査にて萎縮した肝外側区域に腫瘤を認めた.画像所見と腫瘍マーカー高値から肝内胆管癌と診断し肝左葉切除を施行した.病理組織学的診断では3.5×2.5cmの中分化型腺癌で,血管と胆管への侵襲と漿膜浸潤を認め,リンパ節転移を伴っていた.肝内結石と異なり,総胆管結石への肝内胆管癌の合併は稀である.また,門脈血栓症後の肝内胆管癌発症例は報告がない.総胆管結石に起因する門脈血栓症により肝萎縮をきたし,萎縮した肝左葉に肝内胆管癌を発症した稀な症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.