2016 年 41 巻 2 号 p. 267-271
患者は54歳の女性.約半年前から右鼡径部の膨隆を自覚するようになり,徐々に増大してきたため,当科を受診.右鼡径部に40mm大の腫瘤を触知し,超音波検査およびCT検査にて,右鼡径部にcystic massを認め,Nuck管水腫疑いの診断となった.比較的短期間で増大してきており,子宮内膜症や悪性疾患の可能性が否定できないため,診断的治療目的に手術の方針となった.画像検査にて,Nuck管水腫が内鼡径輪より腹腔側へ広がっていることはないと判断し,前方アプローチにて手術を施行した.病理組織学的所見は,Nuck管水腫の診断であった.
Nuck管水腫の治療は,外科的切除が第一であるが,近年,腹腔鏡アプローチでの報告例が散見される.しかし,腹腔鏡手術の合併症として,Nuck管水腫の増悪があることを考慮すべきであり,安易に腹腔鏡アプローチを選択するのではなく,術前にNuck管水腫の局在を画像検査にて確認し,術式を選択することが重要であると思われた.