2016 年 41 巻 4 号 p. 646-651
横行結腸癌術後にヘパリン起因性血小板減少症(heparin induced thrombocytopenia:HIT)Ⅱ型を発症した1例を経験した.患者は80歳男性.心筋梗塞の既往があり,抗血小板薬を術前9日より中止後,ヘパリン置換とし横行結腸癌に対して拡大右半結腸切除術を施行した.術後1日目に肺炎を発症,術後3日目に呼吸状態が増悪したため人工呼吸器管理を開始し,同時にヘパリン投与を再開した.術後7日血小板減少傾向を認め,重症肺炎による播種性血管内凝固症候群(Disseminated intravascular coagulation:DIC)と診断した.術後8日左上腕動脈から橈骨,尺骨動脈の閉塞を認めたため血栓除去術を施行した.術後9日左橈骨動脈に再閉塞を認め,血小板の著明な低下を認めた.HITを疑いヘパリン投与を中止,アルガトロバン投与を開始したところ,血小板数は改善傾向を示した.HIT抗体陽性によりHITと診断した.術後20日,血小板数は改善し,肺炎も改善傾向にあったが突然ショックとなり心停止し死亡した.剖検にて死因は血栓により形成された肺実質破壊性の空洞が破綻したことによる緊張性気胸と診断された.