日本外科系連合学会誌
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症例報告
後下縦隔迷走神経鞘腫の腹臥位胸腔鏡下での1切除例
杉田 浩章呉林 秀崇宗本 義則
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2016 年 41 巻 5 号 p. 749-754

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抄録

症例は47歳,女性.甲状腺腫瘤経過観察中に胸部CTで下部食道腫瘤を指摘され,当科紹介となった.CT・MRIでは下部食道右側に40mm大の辺縁濃染を伴う境界明瞭・辺縁平滑な腫瘤を認め,食道と一部境界不明瞭で発生部位の判別困難であった.上部消化管内視鏡は粘膜下腫瘍の所見であったが,超音波内視鏡で後縦隔腫瘍と判断し,手術の方針とした.

腹臥位・右胸腔アプローチで胸腔鏡手術を施行.食道右壁に胸膜に包まれた腫瘍を認め,胸膜を切開すると頭尾方向で迷走神経と連続していた.食道と剝離し,神経を切離し腫瘍を摘出した.肉眼的に被膜を有する充実性腫瘍で,病理組織学的に良性神経鞘腫と診断した.

迷走神経鞘腫は稀な疾患であり,本症例のような後下縦隔発生例では食道腫瘍との鑑別が困難である.今回われわれは超音波内視鏡が鑑別に有用であり,腹臥位胸腔鏡下による良好な視野での1切除例を経験したので報告する.

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© 2016 日本外科系連合学会
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