2017 年 42 巻 2 号 p. 297-301
症例は20歳,女性.右下腹部痛を主訴に当科を受診した.腹部USで右下腹部腹壁直下に60×25×34mm大の腫瘤性病変を認め,内部は比較的均一で血流は認めなかった.造影CTでは腫瘍辺縁の造影効果を認めたが,内部にはほとんど認めなかった.腸管との連続性は認めなかった.MRI検査T1強調画像で低信号,T2ではやや高信号であった.以上より,大網腫瘍の診断で腹腔鏡下に手術を施行した.腫瘍は大網に限局しており腫瘍から十分な距離を確保し切除した.病理検査結果は,紡錘形細胞の結節性増殖を認めβ-catenin陽性よりデスモイド腫瘍と診断された.既往歴,家族歴に特記事項なく大網に限局して発生したデスモイド腫瘍は稀であり,文献的考察を加え報告する.