抄録
播種性転移を抑制することを目的に, 根治度Cを除く漿膜浸潤胃癌203例中54例を対象に, 手術時閉腹前の腹腔内にMitomycin C 20mg/m2およびcisplatin 30mg/m2を投与し, 体内薬物動態及び臨床効果を検討した。その結果, 各薬剤の血中のAUCとC maxは有効な濃度が得られた。予後では, 全症例では腹腔内化学療法 (以下IP) の有無別に差がなかったが, S2でIP施行例の予後が非施行例より良好な傾向を示した (p=0.15) 。さらに, S2症例に限り, 肉眼型別に検討すると, 浸潤型ではIP施行例の予後が有意に良好であった (p<0.01) 。S2かつ浸潤型に限り胃癌の再発形式を検討すると, IPの有無別に再発率や再発形式の頻度に差はなかった。以上から, 術中のIPは腹膜再発の抑制には効果がなかったが, とくに浸潤型の漿膜浸潤胃癌の生存期間を延長させる可能性が示され, 胃癌に対する局所療法として有用であること推測された。