抄録
多発性分枝型粘液産生膵腫瘍の1例を経験したので報告した。症例は72歳, 男性。主訴は左季肋部痛。現病歴は4~5年前より主訴を認めており, 近医にて膵嚢胞性病変を指摘され入院となる。腹部CT検査では膵頭部に大きさ約4cmの多房性嚢胞性病変を認めた。内視鏡的逆行性膵管造影では膵頭部に多房性嚢胞の一部が描出されたが, 膵尾部にも大きさ17×10mmの多房性嚢胞を認めた。また乳頭より粘液の排出も認めたが, 膵液の細胞診はclass IIIであった。多発性粘液産生膵腫瘍と診断し手術を施行した。手術は膵体部温存を目的に脾・膵尾部のみを切除したが, 嚢胞が含まれていなかったため, 膵全摘術に変更した。標本造影では術前に指摘された膵頭部と尾部の嚢胞以外に膵体部にも大きさ6×5mmの嚢胞を認めた。病理所見では膵頭部の嚢胞は腺腫, 体部と尾部の嚢胞は過形成であった。