1999 年 24 巻 6 号 p. 832-838
受診時ヘモグロビン (Hb) 濃度13.0g/dl未満の消化器癌手術症例29例に対し, 皮下注用遺伝子組み換えヒトエリスロポエチン (rHuEPO : エスポー) を自己血貯血前より投与し (前打ち投与群), 貯血時にのみrHuEPOを投与した16例 (前打ち非投与群) をコントロール群とした。さらに, 前打ち投与群を初診時Hb濃度により3群に分類し, 貯血にともなうHb濃度の推移などを検討した。前打ち投与群全体では貯血にともなうHb濃度の低下がわずかで, とくにHb12.5g/dl未満の症例ではrHuEPOの貯血前投与によりHbは増加する傾向を示し, 貯血にともなうHbの低下は全く認めなかった。前打ち投与群および前打ち非投与群における貯血量, 術前期間は有意差を認めなかった。消化器癌手術における皮下注用rHuEPO貯血前投与は貯血にともなう貧血の防止や貯血量の確保に有用と思われた。