日本外科系連合学会誌
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術前診断に苦慮した膵癌同時性肝転移の1例
井村 龍麿池田 直也庄 雅之西沼 亮野村 純子成清 道博中島 祥介
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キーワード: 膵癌, 肝転移, 膵内転移
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2005 年 30 巻 1 号 p. 77-82

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抄録
症例は54歳男性。背部痛を主訴に受診。腹部エコーを施行し, 膵体部に径3cmの腫瘤を指摘された。腹部造影CT, MRIでは膵体部と膵尾部にも径1cmの2カ所の膵癌が疑われた。また腹部造影CTにて肝床部, 胆嚢底部内腔に突出する径3cmの腫瘤陰影を認めた。肝床部の腫瘤は横行結腸を巻き込むような形で存在していた。注腸造影, 大腸内視鏡検査より胆嚢癌の壁外浸潤が疑われた。膵体尾部2カ所の膵癌および胆嚢癌の診断で膵体尾部切除, 拡大胆嚢摘出, 横行結腸部分切除術を施行した。病理学的診断では膵体尾部2カ所の腫瘍に連続性はなく, 両者とも扁平上皮生化を伴う低分化型管状腺癌であり膵内転移と考えた。肝床部の腫瘍は肝を主座とする高分化型腺癌で胆嚢粘膜に異常はなく, 膵癌肝転移巣からの胆嚢, 横行結腸浸潤と考えた。今回われわれは膵内転移および肝転移巣より胆嚢底部, 横行結腸へ浸潤をきたした稀な膵癌の1切除例を経験した。
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