抄録
症例は60歳, 男性。他院で絶食のみで軽快するイレウスを4回繰り返し, 精査加療目的に当院紹介となった。イレウス管を挿入後, 造影検査にて回盲部より約30cm口側に長さ1cmの狭窄部位を認めた。虫垂切除の既往があり, 癒着性イレウスや小腸腫瘍による狭窄の可能性があると判断した。イレウス管による腸管減圧後, 腹腔鏡下に手術を開始した。狭窄部は膀胱漿膜に浸潤する小腸腫瘍で, 腹腔鏡補助下に回腸部分切除術を施行し, 術中迅速病理検査で回腸悪性リンパ腫と診断した。術前診断の困難な小腸病変に対して, 腹腔鏡を用いた手術は診断, 治療を同時にかつ最小限の侵襲で行いうる有効な手段と考えられた。