日本臨床スポーツ医学会誌
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東京2020 オリンピック・パラリンピック競技大会における眼科診療
上條 由美遠藤 貴美小林 知世辻 拓也清水 朋美
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2023 年 31 巻 3 号 p. 505-514

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抄録

東京2020 オリンピック・パラリンピック競技大会は,新型コロナ感染症拡大のために,2020 年に開催される予定であった大会を1 年間延期した.今大会での医療提供体制は,通常選手村に必要な医療の他に感染対策が重視された.この研究の目的は,今大会における選手村診療所の眼科診療の特徴を記録し,将来に引き継ぐことである.

眼科診療は,すべてボランティアで,医師19 名,視能訓練師14 名,眼鏡士11 名が7:00~23:00 までシフトを組んで対応した.選手村診療所内の過密化を防ぐために,インターネット上で利用可能な予約管理システムを導入した.延患者数は,オリンピック期間は,697 人,パラリンピック期間は,556 人だった.視力0.1 以下の人は,オリンピック競技大会では1/620(0.2%),パラリンピック競技大会では31/516(6.0%)だった.視力1.0 以上の人は,オリンピック競技大会では602/620(97.1%),パラリンピック競技大会では436/516(84.5%)だった.オリンピック競技大会中に7 人が外傷によって受診した.診療参加者からのアンケート調査結果より,診療器具として手持ちスリットランプやレフラクトメーターが必要で,眼鏡レンズとしては,事前に準備していたレンズより,さらに強い/弱い度数が必要だった.

眼科チームは,新型コロナ感染症の中で効率的に医療を提供することができた.

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