日本臨床スポーツ医学会誌
Online ISSN : 2758-3767
Print ISSN : 1346-4159
当院におけるプロレスラーの外傷・障害の検討
清水 禎則立石 智彦佐藤 哲也長瀬 寅中川 照彦土屋 正光
著者情報
ジャーナル フリー

2024 年 32 巻 2 号 p. 232-239

詳細
抄録

プロレスリング(プロレス)は,レスリングを基盤とした投げ技・関節技のほか打撃技や飛び技も含めた激しい攻防が行われる格闘技である.試合中の負傷も少なくないが,プロレスにおける傷害統計や1 施設での治療経験の報告はない.2008-2021 年に当科を受診したプロレスラー80 例181 件(男性71 例169 件,女性9 例12 件)を対象とし,外傷・障害部位別頻度と種別頻度について検討した.部位別頻度では,下肢92 件(50.8%),上肢61 件(33.7%),体幹17 件(9.4%),頭部・顔面11 件(6.1%)であり,下肢・上肢で80% 以上を占めた.下肢の内訳は,膝関節67 件(37.0%),足関節12 件(6.7%),足6 件(3.3%)であった.上肢の内訳は,肩・肩鎖関節24 件(13.3%),肘関節25 件(13.8%),手・手関節10 件(5.5%)であった.種別頻度においては,試合等での外傷のほか,ダメージの蓄積によると考えられる変形性関節症や炎症性疾患の占める割合が高いのが特徴的であった.手術加療を行った症例は32 例41 件であり,下肢ではACL 再建術が10 例11 件(うち再再建2 件)と最多であった.上肢では肘部管症候群に対する尺骨神経移行術が5 例6 件,肘関節鏡視下遊離体摘出術が4 例5 件と多かった.他競技同様,手術適応例に対しては適切な時期に手術加療を行い,十分なリハビリ期間を経て復帰することが望ましい.

著者関連情報
© 2024 一般社団法人日本臨床スポーツ医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top