2024 年 32 巻 2 号 p. 286-294
ランニング障害はランナーに多く発生するオーバーユース障害である.足部や下腿への反復的な機械的負荷が原因の一つであり,筋損傷や筋組織・筋硬度の変化を伴うと言われているが,ランニングに伴う筋硬度の経時的な変化については明らかではない.本研究は,ランニング課題前後および24 時間後の下腿筋硬度について,超音波ストレインエラストグラフィを用いて比較,検討することを目的とした.本研究の対象者は健康な成人男性13 名である.足部アライメントを測定した後,30 分間のランニング課題前(pre),直後(post),24 時間後(24-h)の3 時点の下腿筋硬度をエラストグラフィ付き超音波画像診断装置で測定した.3 時点の筋硬度変化を調べるとともに,筋硬度変化と足部アライメントの関係を検討した.その結果,前脛骨筋の筋硬度は,post と比較して24-h で有意に増加した.また,腓腹筋内側頭部,長趾屈筋の筋硬度のpre から24-h までの増加は,それぞれ舟状骨ドロップテスト値,舟状骨高と正の相関があった.このことから,ランニング障害の予防に向けて,足関節底屈筋群へのアプローチが必要である可能性が示唆された.