日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
術前にヘパリン起因性血小板減少症(HIT)と診断された心拍動下冠動脈バイパス術(OPCAB)の1例
田中 恒有汐口 壮一権 重好入江 嘉仁今関 隆雄
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2008 年 37 巻 4 号 p. 237-239

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抄録

ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)はヘパリン使用に伴う副作用であり,血小板減少をきたし致死的な動静脈血栓症を合併する疾患である.欧米での報告が多く,本邦では稀な疾患とされてきたが,近年本邦においても症例報告が散見されるようになった.今回われわれは心拍動下冠動脈バイパス術(OPCAB)の術前待機中に HIT と診断された1例を経験した.症例は67歳の男性で,労作時の息切れを主訴に近医を受診した.狭心症が疑われ冠動脈造影検査を施行し,冠動脈左主幹部(LMT)に90%狭窄を認めた.当院に転院してヘパリンの持続静注を開始し,手術待機中であったが,入院16日後より発熱と血小板減少を認め手術延期となった.HIT を疑い,ただちにヘパリンを中止してアルガトロバンの持続静注に切り換えた.抗 HIT 抗体は陽性であった.血小板数は改善し,抗凝固にアルガトロバンを使用して OPCAB2 枝を施行した.術後経過は順調で,MDCT にてバイパスグラフトの開存を確認し第13病日に退院した.

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