日本心臓血管外科学会雑誌
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巻頭言
総説(依頼)
  • 平田 康隆, 平原 憲道, 村上 新, 本村 昇, 宮田 裕章, 髙本 眞一
    2020 年 49 巻 4 号 p. 151-154
    発行日: 2020/07/15
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    [目的]日本心臓血管手術データベース(JCVSD)先天性部門は現在,参加施設数約120施設となって全国の施設をほぼカバーしている.今回,われわれは2017~2018年のデータを用い,頻度の高い20術式の死亡率と術後合併症の検討を行った.また,STS-EACTSで現在使用されているSTAT Mortality Categoriesに基づき,それぞれのcategoryでの死亡率を算出した.[方法]JCVSD先天性部門のデータから2017~2018年の先天性心疾患手術データを抽出し,20術式についての死亡率(90日または在院)および合併症率を算出した.また,STAT Mortality Categoriesに基づいて術式の分類を行い,それぞれのcategoryにおける本邦での在院死亡率を算出した.[結果]心房中隔欠損閉鎖術は死亡率0%,心室中隔欠損閉鎖術の在院死亡率は0.2%,ファロー四徴症手術,完全房室中隔欠損症修復術,大動脈縮窄複合修復術,ラステリ手術,両方向性グレン手術,フォンタン手術などの死亡率は3%以下と良好であった.体肺動脈シャントの死亡率は4.9%,総肺静脈還流異常症,ノーウッド手術の死亡率はそれぞれ11.1%,15.7%であり,2015~2016年と同程度であった.STAT Mortality Category別の死亡率ではcategory 1~5でそれぞれ0.3%,2.7%,2.9%,5.9%,15.5%であり,2013~2016年のSTSの報告とほぼ同程度の死亡率であった.[結論]JCVSDの分析により,2017~2018年に本邦で行われた先天性心疾患の主な術式の死亡率ならびに合併症の頻度,STAT Mortality Category別の死亡率を明らかにした.これらの統計は日本全体の経年動向,ならびに他国との成績比較などの基盤として重要な役割を果たすと考える.

  • 齋藤 綾, 隈丸 拓, 本村 昇, 宮田 裕章, 髙本 眞一
    2020 年 49 巻 4 号 p. 155-159
    発行日: 2020/07/15
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    2017年および2018年の日本心臓血管外科手術データベースに登録された単独冠動脈バイパス術症例について術前状態および術後短期成績,グラフト選択の現況,前下行枝血行再建へのグラフト選択(年齢別)について分析した.単独冠動脈バイパス術については54.6%(26,913例中14,684例)に人工心肺非使用で施行された.左前下行枝の血行再建にはLITAが76.4%,RITAが19.0%に使用された.手術死亡率は待機的手術では1.5%(On-pump CABG : ONCAB 1.9%,off-pump CABG : OPCAB 1.2%,p<0.001),緊急手術では7.4%(ONCAB 10.2%,OPCAB 4.3%,p<0.001),全体では2.5%であった.周術期合併症・手術死亡率ともにOPCABで有意に成績が良好であった.2013年以降のJapanSCORE IIは年次ごとに上昇しており症例の重症化がうかがわれた.手術死亡率:術後30日以内の死亡または在院中の死亡

  • 阿部 知伸, 隈丸 拓, 中野 清治, 本村 昇, 宮田 裕章, 髙本 眞一
    2020 年 49 巻 4 号 p. 160-168
    発行日: 2020/07/15
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    [目的]2017,2018年のJCVSDの集計を記述し,本邦の弁膜症手術の現状と傾向を理解する一助となることを目指す.指標となる代表的術式の手術成績を示し,今後の弁膜症治療を考えるうえで重要と思われる経カテーテル的大動脈弁置換術,右開胸での弁膜症手術についてもJCVSDのデータから提供できる統計を記述する.[方法]JCVSDデータベースより2017年と2018年の心臓弁膜症手術データを抽出した.本報告が始まってからの大動脈弁手術数6年間の推移を示した.弁膜症の代表的な術式について,年代別に,手術死亡率を示した.小切開弁手術と経カテーテル的大動脈弁置換術の手術成績につきJCVSDから提供できるデータを記載した.[結果]2015~2016年の2年間と比較して2017~2018年は経カテーテル的大動脈弁置換術の著しい増加がみられたが外科的大動脈弁置換術も26,054例から28,202例に増加がみられた.弁膜症初回手術の手術死亡率は,大動脈弁置換単弁で生体弁機械弁とも1.8%,僧帽弁形成0.9%など良好であった.初回生体弁僧帽弁置換は8.2%,機械弁で4.6%であった.冠動脈バイパス術を併施した症例では大動脈弁置換初回単弁で5.2%,僧帽弁形成で4.9%であった.人工弁選択では大動脈弁位では60代でも72.6%の患者に生体弁が用いられており,より生体弁が多く用いられる傾向が明らかであった.右開胸での手術について,初回単弁僧帽弁形成では31.8%の症例が右開胸でなされていた.手術成績について多くの転帰で右側開胸が良好であったが,同時に右開胸の症例のほうがJapan Scoreでリスクの低い症例の割合が大きいことが分かった.大動脈遮断時間,人工心肺時間は側開胸で長かった.大動脈弁置換術では右側開胸で行われているのは6.3%,やはり右側開胸で多くの転帰で手術成績が良好であったが,これも側開胸でJapan Scoreで低リスク症例の割合が大きかった.経カテーテル的大動脈弁置換術と外科的大動脈弁置換全体の手術死亡率は,それぞれ1.5%と1.8%であった.[結語]2017~2018年のJCVSDによる弁膜症手術の集計を報告した.

  • 志水 秀行, 平原 憲道, 本村 昇, 宮田 裕章, 髙本 眞一
    2020 年 49 巻 4 号 p. 169-179
    発行日: 2020/07/15
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    [目的]本邦における大動脈疾患に対する治療の現状を分析した.[方法]日本心臓血管外科手術データベース(JCVSD)を用い,2017年,2018年に本邦で施行された胸部・胸腹部大動脈手術の症例数,手術死亡率,合併症(脳梗塞,腎不全,肺炎,対麻痺)発症率を,部位(基部・上行,弓部,下行,胸腹部),術式,年齢階層に分けて分析した.[結果]症例数は約40,000例で,解離と非解離がほぼ同数であった.手術年齢は70歳代が最多で,高齢になると基部・上行における基部置換(特に自己弁温存),弓部以遠における開胸手術(人工血管置換,オープンステントグラフト)の割合が減少した.全体の死亡率は5.3%であった.術式別の成績は,基部・上行では自己弁温存手術の死亡率,合併症発症率が最も低く,弓部以遠では非開胸手術(TEVAR,デブランチ)の死亡率,脳梗塞,腎不全,肺炎の合併率が開胸手術より低かった.弓部の対麻痺は他の合併症と異なり,人工血管置換における合併率が最も低かった.年齢に関しては,基部・上行,弓部,下行ではすべての術式で80歳以上の手術死亡率が80歳未満より有意に高かった.[結論]本邦における胸部・胸腹部大動脈手術は70歳代が最多で高齢であったが,全体の死亡率は5.3%で良好であった.80歳以上では死亡率,合併症発生率が高かった.今後さらなる手術成績の改善が求められる.

原著
  • 仕様
    林田 恭子, 松下 努, 増田 慎介, 森本 和樹
    2020 年 49 巻 4 号 p. 180-187
    発行日: 2020/07/15
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    [目的]急性腎障害(AKI)のリスクが高いとされる心臓・胸部大血管手術症例の術後AKIと持続的血液濾過透析(CHDF)の有用性について検討した.[方法]2014年から2017年までの心臓・胸部大血管手術症例のうち,透析患者と術後PCPS使用例を除いた303例を対象とし,慢性腎臓病の重症度分類に基づき6群に分けた(術前推算糸球体濾過量(eGFR); G1: ≥90,G2 :<90,G3a :<60,G3b :<45,G4 :<30,G5 :<15).術後AKIとCHDF開始後の尿量,循環の変化について検討した.[結果]術後AKI発生率は30.7%.術前eGFRが60 ml/min/1.73 m2 未満のG3a,G3b,G4,G5は,腎不全のないG1,G2と比較してAKI発生率が有意に高く(p<0.01),多変量解析では,術前eGFRが術後AKI回避の予測因子となった(カットオフ値:56 ml/min/1.73 m2,odds ratio=4.104,AUC=0.6954).乏尿・無尿でCHDFを使用したのは11例(3.6%)であった.CHDF開始後,尿量と体血圧は有意に(p<0.01)上昇した.なかでも2例では,CHDF開始後1時間で,乏尿・無尿状態から急速に尿量が増加した(2.5 ml/kg/h,1.8 ml/kg/h).[結論]心臓・胸部大血管手術後のAKI発生率は高率であった.術後乏尿・無尿に至った症例では,早期にCHDFを導入することにより尿量,循環が改善する場合がある.

症例報告
[先天性疾患]
  • 宇野 吉雅, 森田 紀代造, 篠原 玄, 國原 孝
    2020 年 49 巻 4 号 p. 188-191
    発行日: 2020/07/15
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    症例は57歳,女性.原疾患であるEbstein病に対して12歳時に三尖弁形成術,その後TR, MR再燃に対して32歳時に人工弁置換術(T弁位生体弁,M弁位機械弁)が施行されワーファリン内服管理となっていた.以後40歳ごろより出現していた右下腿皮膚潰瘍が,46歳時に行われたT弁位生体弁硬化に対する人工弁再置換術(機械弁)術後より増悪,難治性となり,これまでに3回植皮手術を受けている.原因については,種々の内科的検査を重ねたが確定に至らず,また植皮手術に際し周術期の抗凝固療法をワーファリンよりヘパリン静注に移行すると皮膚潰瘍所見の改善傾向が認められることより,最終的にはワーファリンの副作用によるものと考えられた.そこでワーファリン回避を目的に,今回4度目の植皮手術後よりヘパリンの皮下注を導入し抗凝固療法を継続した.容量および凝固能の指標としては,1回10,000単位を12時間おきに使用する形で適宜APTTを測定し皮下注後の効果の推移を検討するとともに,併せてD Dimer値により潜在的な血栓弁の評価を行った.退院後も同管理を継続しているが,現時点ではほぼ安定したAPTT測定値が得られ,また心臓エコー検査等において血栓塞栓症を疑わせる所見は認められていない.さらに皮膚潰瘍の再燃なく,植皮創部の状態も良好な経過が得られている.今後も外来における管理継続を予定しているが,長期にわたるヘパリン皮下注による抗凝固療法に関しては症例経験あるいは文献報告がほとんどされていないため,慎重な経過観察が重要と考えている.

  • 磯部 将, 野村 耕司, 黄 義浩, 村山 史朗
    2020 年 49 巻 4 号 p. 192-195
    発行日: 2020/07/15
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    症例は9カ月男児,胎児診断で左室大動脈トンネルを指摘され,出生後約2時間で緊急左室大動脈トンネルパッチ閉鎖術を施行した.患児は大動脈弁狭窄兼閉鎖不全症も合併しており,術後上行大動脈拡大の進行による気管の圧排,および呼吸器症状の遷延を認めたため,上行大動脈の後方縫縮術を施行した.術後気道圧排所見は消失し呼吸器症状が改善された.気道と隣接する大動脈後面を縮小する後方大動脈縫縮は,吊り上げ術,前方縫縮術,スライド術などに比してより直接的,かつ長期的な圧排回避効果が期待しうる.

[成人心臓]
  • 内山 光, 古川 浩二郎, 西島 卓矢, 平田 雄一郎, 恩塚 龍士, 田山 栄基, 森田 茂樹
    2020 年 49 巻 4 号 p. 196-199
    発行日: 2020/07/15
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    症例は51歳女性.僧帽弁位感染性心内膜炎と診断され抗菌薬加療中に播種性血管内凝固症候群,多発性脳梗塞,脳出血を合併し転院搬送された.経胸壁心臓超音波検査では僧帽弁前尖に著明な可動性を有する20 mmを超える疣贅を認め,頭部CTで左前頭葉に広範囲皮質下出血を認めた.右片麻痺を認めたが,従命は可能であった.巨大疣贅による新規脳塞栓症は致命的と考え,早期開心術の方針とした.開心術周術期の脳合併症増悪リスクを軽減する目的で,脳出血発症翌日に開頭血腫除去および外減圧を施行し,頭蓋内の止血を確認後,開頭術4日後に疣贅切除および僧帽弁形成術を施行した.術中抗凝固には通常のヘパリン管理を行った.術後に脳出血増悪や脳浮腫による脳幹圧迫,新規脳出血は認めなかった.神経学的後遺症として,右上肢巧緻運動障害,症候性てんかんを認めたが,自力歩行可能となりリハビリ転院に至った.頭蓋内出血を合併した感染性心内膜炎に対する急性期の開心術は一般的には推奨されないが,かかる病態に対し,本症例での治療戦略は安全に開心術を行うための選択肢の1つになり得る.

  • 熊谷 国孝, 石黒 眞吾
    2020 年 49 巻 4 号 p. 200-204
    発行日: 2020/07/15
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    症例は56歳女性.心臓超音波検査にて,重症僧帽弁閉鎖不全症および僧帽弁前尖に疣贅様構造物の付着を認め,感染性心内膜炎と診断された.抗生剤加療開始となったが,抗生剤投与中に感染性脳動脈瘤破裂による脳出血を発症した.クリッピングを行い手術待機としていたが.突然の胸痛を認めた.心電図検査にてV1-V5のST上昇,心臓超音波検査にて前壁の壁運動低下および僧帽弁前尖の疣贅様構造物の縮小を認めた.塞栓による心筋梗塞が疑われ,緊急冠動脈造影検査を行った.左前下行枝#6の完全閉塞を認め,カテーテル吸引で疣贅様構造物を摘出し,狭窄が残存したためステント留置を行った.カテーテル治療中から血圧が低下しており,カテコラミンおよび大動脈バルンパンピング補助下でも血圧が保てなかったため,緊急で僧帽弁置換術を行った.術後は循環動態が改善し,リハビリののち自宅退院した.

  • 佐藤 俊, 仁科 健, 矢田 匡, 上田 裕一, 山中 一朗
    2020 年 49 巻 4 号 p. 205-209
    発行日: 2020/07/15
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    症例は77歳の女性.60歳代より非弁膜症性心房細動(non valvular atrial fibrillation ; NVAF)に対してワルファリンで抗凝固療法を施行されていた.1年半前に心原性脳塞栓症を発症しダビガトラン300 mg/日の内服を開始した.しかし,3カ月前に脳塞栓症を発症した.退院後のMRIにてさらに新規の脳塞栓症発症を認めた.超音波検査および造影CTを施行し,左房内に37×29 mm大の遊離した血栓を認めたため,緊急手術を施行した.左房内の血栓摘出術および左心耳閉鎖術を行った.術後はワルファリンによる抗凝固療法を行い,再発なく経過している.ダビガトラン内服中にもかかわらず左房内巨大血栓による多発塞栓症を発症した1例を経験したので報告する.

  • 小松 正樹, 茅野 周治, 御子柴 透, 田中 晴城, 市村 創, 山本 高照, 大橋 伸朗, 福家 愛, 和田 有子, 瀬戸 達一郎
    2020 年 49 巻 4 号 p. 210-213
    発行日: 2020/07/15
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    症例は62歳,男性,Marfan症候群.15年前に大動脈弁輪拡張症,大動脈弁閉鎖不全症,胸部大動脈瘤の診断で他院にてModified Bentall手術,上行弓部大動脈全置換術を施行した.その後外来で経過観察中に,CT検査にて左右冠動脈瘤とcomposite graft弁輪縫着部位に仮性動脈瘤を認め,手術目的で当院紹介となる.左右の冠動脈瘤壁は菲薄化し,基部に仮性瘤を認めた.人工弁を摘出し再大動脈基部置換術を施行,冠動脈は瘤を切除し直接再建した.Bentall原法では吻合部仮性動脈瘤の発生が問題であったが,Bentall変法となり手術成績は向上している.しかし,結合織異常を有する症例では術後合併症のリスクが高く,長期にわたる経過観察が必要である.

  • 川井田 大樹, 田邉 大明, 古谷 光久, 加藤 雄治, 山崎 信太郎, 保坂 公雄, 外山 雅章
    2020 年 49 巻 4 号 p. 214-217
    発行日: 2020/07/15
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    ステントレス生体弁も,ステント生体弁と同様に構造的生体弁劣化(SVD)や大動脈基部に破綻を生じ,再手術を要することがある.今回,Freestyle弁による大動脈基部置換術後の生体弁機能不全に対し基部の破綻はないと判断し,leaflet tearによるARに対して弁置換術のみを予定していたが,結果的に大動脈基部置換術を要した症例を経験したので報告する.当院で17年前に大動脈炎症候群による大動脈弁閉鎖不全症(AR)に対してFreestyle弁を用いて大動脈基部置換術(full-root, Cabrol法)を施行された52歳女性が,心雑音を指摘され,当院へ紹介された.精査の結果,Freestyle弁のSVDによるsevere ARを認め,大動脈弁置換術が予定された.しかし,術中にFreestyle弁の大動脈壁の構造破綻が判明し,基部置換術を要した.初回手術をfull-root法で行った,年月が経ったステントレス弁の再手術では,弁尖と同様に大動脈壁も劣化する.SVDのため大動脈弁置換術を行う際は,術前画像検査で大動脈基部の拡張があれば,大動脈基部置換術を考慮しなければならない.

  • 長谷川 悠人, 大倉 一宏, 大箸 祐子, 新谷 恒弘
    2020 年 49 巻 4 号 p. 218-221
    発行日: 2020/07/15
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    症例は71歳女性.44年前に他院にて僧帽弁狭窄症(MS : mitral stenosis)に対して閉鎖式僧帽弁交連切開術(CMC : closed mitral commissurotomy)が施行された.24年前に脳梗塞を発症したのを契機に当院にて経過観察となった.定期受診時の心エコー検査にて心尖部左室瘤を指摘され,破裂予防目的に瘤切除術の方針とした.手術所見にて瘤辺縁部分に一致した人工物の付着を認め,CMCの際に挿入した経心室交連切開刀の修復部位に発生した仮性瘤と診断した.瘤部分を切除しフェルトストリップ補強下に2層で閉鎖した.病理組織学的に正常心筋組織を認めず,仮性瘤と診断した.左室仮性瘤の原因は心筋梗塞後によるものが多く,心臓手術後の報告は僧帽弁置換術後の症例を除くと稀である.今回,44年前に施行されたCMC時の経心室交連切開刀挿入部から発生した左室仮性瘤に対して瘤切除を施行した1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

  • 名村 理, 岡本 竹司, 中村 制士, 三村 慎也, 村岡 拓磨, 小林 遼平, 土田 正則
    2020 年 49 巻 4 号 p. 222-227
    発行日: 2020/07/15
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    症例は36歳男性で,既往手術として14歳時に心房中隔欠損直接閉鎖術,18歳時に僧帽弁置換術・三尖弁輪縫術がともに胸骨正中切開で施行された.27歳頃から下腿浮腫,うっ血肝が出現し,35歳頃から下腿浮腫が増悪し,血清総蛋白3.6 g/dl,血清アルブミン1.6 g/dlと低蛋白血症,低アルブミン血症も認め,精査が行われた.心臓カテーテル検査で右室圧曲線はdip and plateau型を呈し,CTで左室周囲主体に心膜の肥厚・石灰化を認めた.また,99mTcヒト血清アルブミンシンチグラフィーで横行結腸肝彎曲部に集積を認めた.以上から蛋白漏出性胃腸症を伴う収縮性心膜炎と診断され,手術適応となった.手術は左前側方開胸で体外循環非使用下に心膜剥皮術を施行した.術後は心不全コントロールにやや時間を要したが36病日に退院した.退院後,下腿浮腫は改善し,術後約3カ月で血清総蛋白7.1 g/dl,血清アルブミン4.2 g/dlと正常化した.

[大血管]
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