日本心臓血管外科学会雑誌
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原著
内視鏡下大伏在静脈採取の初期成績
松山 重文末永 悦郎里 学古賀 秀剛
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2008 年 37 巻 5 号 p. 255-258

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抄録

近年,冠動脈バイパス手術 (CABG) におけるさまざまな低侵襲化の努力がなされている.グラフト採取も可能な限り低侵襲で行うべきであり,当院では2006年5月より内視鏡下大伏在静脈採取 (ESVH) を導入した.今回 ESVH の初期成績を報告する.2006年5月~2007年10月の CABG 症例のうち ESVH を施行した72例を対象とした.平均年齢73±6.7歳,男性54例,女性18例.採取には Vasoview System を用いた.術後冠動脈造影または CT を14±3日目に33例54枝に施行した.1例で ESVH から直視化採取へ移行した.大伏在静脈の採取時間は平均36±11分,枝の引き抜き損傷箇所は平均1.19±1.21箇所に認めた.初期5例,最終5例を比較すると,採取時間は57±12分から23±6分へ有意に短縮し,引き抜き損傷箇所も3.2±1.3箇所から0.4±0.48箇所へと有意に減少した.術中の graft 血流量は平均25±13ml/min,早期開存率は87%(47/54)であった.創合併症は2例に認め,発生頻度は2.7%(2/72)であった. ESVH は費用の問題等解決すべき問題はあるが,短い learning curve で取得可能で,初期成績は満足いく結果であった. ESVH は創合併症の頻度が低く美容上の利点はきわめて大きいと思われ,今後普及していくべきであると考える.

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