日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
Print ISSN : 0285-1474
ISSN-L : 0285-1474
症例報告
左室破裂手術後4年目の左室仮性瘤に対する左開胸,低体温,心室細動下破裂孔パッチ閉鎖術の1治験例
大堀 俊介宮島 正博佐々木 昭彦
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 38 巻 6 号 p. 361-363

詳細
抄録

症例は70歳,男性.4年前に回旋枝領域の急性心筋梗塞後に発症した左室自由壁破裂に対してフェルトによる直接縫合閉鎖術が施行された.今回,鎖骨骨折で入院した際に施行されたCTにて偶然左室後壁に8×4 cmの腫瘤が認められた.心臓エコー検査にて左室内腔と腫瘤との間に交通孔を認め,左室仮性瘤と診断した.画像所見より仮性瘤が左室後壁に存在することから左開胸で再手術を行い,部分体外循環下に直腸温28度で心室細動として仮性瘤を切開した.左室との交通孔をダクロンパッチで閉鎖し,修復部を瘤化した心膜にてラッピングして手術を終了した.術後経過は良好で術後18日目に鎖骨骨折治療目的に整形外科に転科となった.左心破裂修復後の仮性瘤は遠隔期の合併症としては非常にまれであり,調べえる限りでは本邦で2例の報告があるのみである.急性心筋梗塞後の左室自由壁破裂術後は仮性瘤の発症の可能性を考え,CT,エコーなどの画像診断を含めた定期的な経過観察が必要であると考えられた.

著者関連情報
© 2009 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top