抄録
症例は51歳,男性.検診にて胸部異常陰影を指摘され,右側大動脈弓に伴うKommerell憩室(径45 mm)と診断された.心内奇形はなく,弓部分枝は鏡像的であり,血管輪は形成していないものと判断した.自覚症状は軽度であったが,食道・気管の大動脈憩室による圧排を認め,瘤化あるいは将来的な破裂の危険を考慮し手術適応とした.手術は右第4肋間開胸にてアプローチし,部分体外循環下に行う予定であったが,中枢側大動脈遮断部位からの出血のため,低体温循環停止下に大動脈憩室部を人工血管(HemashieldTM 24 mm)にて置換した.術後経過は良好であった.比較的稀な左鎖骨下動脈起始部異常を伴わない右側大動脈弓,Kommerell憩室に対する手術を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告した.