日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
外傷性大動脈峡部仮性瘤と右横隔膜ヘルニア合併例に対する治療戦略
——優先順位と補助手段——
中山 泰介加納 正志一色 真吾富永 崇司石戸 谷浩平谷 勝彦澤田 貴裕黒部 裕嗣北川 哲也堀 隆樹
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2011 年 40 巻 3 号 p. 94-97

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抄録

著明な肺換気能低下を伴った外傷性右横隔膜ヘルニアと大動脈峡部仮性瘤の治験例について報告する.症例は24歳の女性で,交通事故による多発外傷で受診した.右横隔膜破裂部から肝の2/3程度が胸腔内に脱出し,右肺を圧迫していた.受傷から2カ月後に大動脈峡部瘤を指摘され,人工血管置換術を施行した.手術は右下側臥位で左開胸から下行大動脈にアプローチした.左大腿静脈脱血,左大腿動脈送血で人工心肺(以下FFバイパス)を開始し分離肺換気を行うと右示指経皮酸素飽和度(以下SpO2)と前頭部の脳内酸素飽和度監視装置(in vivo optical spectroscopy,以下INVOS)の局所脳内酸素飽和度(以下rSO2)が著明に低下した.そこであらかじめ右腋窩動脈に縫着しておいた人工血管からの送血を追加したところSpO2 とrSO2 は上昇し,以後安全域内で推移した.術後は神経学的な異常はなく,順調に経過した.瘤は病理組織学的に仮性瘤と診断された.大動脈瘤切除後30日目に右横隔膜ヘルニアに対して,肝臓の還納を伴う横隔膜ヘルニア修復術を行った.右肺換気能低下を伴う患者の胸部下行大動脈瘤手術では,右腋窩動脈送血を併用することによって安全に手術を行える.

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