抄録
対麻痺を合併した偽腔閉塞型のStanford A型急性大動脈解離に対して緊急手術を行い,術直後から対麻痺が改善した稀な1例を経験したので報告する.症例は79歳,女性.突然の胸背部痛と両下肢の脱力により発症した.CTにより心タンポナーデを合併した偽腔閉塞型のStanford A型急性大動脈解離と診断した.来院直後からショック状態となり,緊急手術(上行大動脈置換術)を発症後3時間40分後に開始した.術後3時間を経て徐々に対麻痺が改善し,3日後には歩行が可能となった.本例では,エントリー閉鎖により偽腔圧が低下したために脊髄虚血が発症後早期に解除されたことによって良好な結果を得たと考えられた.