症例は64歳女性,胸部絞扼感を主訴に近医を受診,心電図上,心房細動でV1-4 に陰性T波,収縮期血圧が80 mmHgで急性冠症候群を疑われ当院へ救急搬送された.来院時の心エコーで右室流出路に腫瘤を認めた.既往歴は,45歳時に子宮平滑筋肉腫,55歳時に大腸平滑筋肉腫(転移性)で切除術を受けていた.CTでは,右室流出路に41×34 mm大,内部に造影効果を伴う腫瘤影を認めた.経胸壁エコー検査では,右室流出路に可動性の腫瘤像を認め,収縮期には肺動脈弁を超えていた.冠動脈造影では右冠動脈から腫瘍への栄養血管を認めた.以上から右室悪性腫瘍の診断で転移性平滑筋肉腫を疑った.手術は体外循環下に右室流出路を切開し腫瘍を切除した.腫瘍は広基性で正常組織との境界が不明瞭であり,可及的に腫瘍を切除した.腫瘍の病理組織診断では,平滑筋肉腫で転移性として矛盾はないとの診断であった.後療法を行わずに,現在経過観察中である.