日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
大動脈弁位生体弁植え込み術後16年目に発症した急性大動脈弁閉鎖不全症の1例
新垣 正美小出 昌秋國井 佳文渡邊 一正津田 和政
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2012 年 41 巻 5 号 p. 228-230

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抄録
患者は39歳女性.24歳時,第一子妊娠経過中に先天性二尖弁による大動脈弁狭窄兼閉鎖不全症と診断され,Carpentier-Edwards pericardial bioprosthesis(CEP)23 mmにて大動脈弁置換術(AVR)を施行した.その後2度の挙児も問題なかった.2010年4月,突然の呼吸苦を自覚し近医を受診,急性大動脈弁閉鎖不全症と診断され当院救急搬入となった.搬入後,心室頻拍,心室細動が頻発,ショック状態で手術室へ搬入となった.手術室にて心停止となったため経皮的補助循環装置(PCPS)を挿入し緊急手術となった.胸骨正中切開にて体外循環(ECC)を確立,心停止を得たのち弁を確認してみると,左冠尖に位置する弁尖が両側のステントポストから断裂しており,完全に左室側に落ち込んでいた.石灰化は軽度で弁尖自体の穿孔を一カ所認めたが感染所見は認めなかった.機械弁にて再AVRを施行するもECCを離脱できず,中等度の僧帽弁逆流を認めていたことから僧帽弁輪縫縮術を追加施行した.約4時間の補助循環ののちECCを離脱した.術後経過は非常に良好であった.生体弁機能不全による急性大動脈弁閉鎖不全症を呈した稀な症例を経験したので報告した.
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