日本心臓血管外科学会雑誌
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原著
開腹法による腹部大動脈瘤の治療戦略
——超高齢者・開腹既往例は除外すべきか?——
古屋 隆俊加賀谷 英生
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2013 年 42 巻 4 号 p. 260-266

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抄録

過去19年6カ月間,緊急を含む非破裂性腹部大動脈瘤・腸骨動脈瘤666例のうち,80歳以上の高齢者を85歳以上(EO群:56例)と84歳以下(O群:113例),開腹歴(+)(A群:164例)と開腹歴(-)(B群:497例),既往で胃胆嚢(M群:120例),結腸(C群:22例),大動脈(Ao群:16例),ストマ(S群:6例)に分けて周術期データを検討した.手術方針は禁煙の徹底,開腹アプローチ,ASOを除きnon-heparin手術,クリニカルパスによる早期歩行と早期退院である.EO群とO群の術前因子の比較では瘤径(6.1 cm/5.6 cm)と腎疾患(80%/63%)に有意差を認め,その他の因子では差を認めなかった.手術時間(201分/210分)と出血量(442 ml/430 ml)は同等で,EO群で合併症率(29%/11%)は高いが術後入院日数(9.4日/8.2日)と自宅退院率(93%/96%)は良好で,高齢者全体の死亡率は0.6%(1/169)であった.A群はB群より剥離時間(74分/63分)と手術時間(218分/204分)が有意に延長するが出血量と輸血率に差はなかった.M群とC群,Ao群とS群はほぼ同等のデータだったので,両群をまとめてM+C群とAo+S群として検討すると,M+C群はB群より剥離時間は6分,手術時間は8分延長した.Ao+S群はM+C群より剥離時間は37分,手術時間は45分延長し,出血量(820 ml/396 ml)と輸血率(22.7%/4.2%)に差はあるが,両群とも85%以上は10日以内に退院した.開腹既往例では慎重な剥離操作を要するが通常の管理で成績は良好で,高齢や開腹既往歴は開腹手術を避ける理由とはならないと考えられた.

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