抄録
症例は88歳女性で,左大腿部拍動性腫瘤を自覚し近医を受診した.CTで下行大動脈に60 mm,右総大腿動脈に30 mm,左浅大腿動脈に25 mmの内膜不整を伴う嚢状瘤を認めたため,当院に紹介となった.発熱,CRP高値を認め,各種検査より多発性炎症性動脈瘤が強く疑われた.ときおり背部痛もあり,破裂の危険性が高いと判断した.高齢であることを考慮し人工血管置換術,ステントグラフト内挿術を含む血管内治療を併用して治療を行った.術後よりステロイドの内服を開始し,炎症反応の改善を認めた.しかし,その後動脈瘤の拡大を認め,出血により死亡した.多発性炎症性動脈瘤は非常に稀な疾患であるが,今回手術治療とステロイド投与を組み合わせた治療を行ったため,文献的考察を加えて報告する.