日本心臓血管外科学会雑誌
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症例
心膜切除術が著効を示した開心術後収縮性心膜炎の1例
林 奈宜古川 浩二郎田中 秀弥諸隈 宏之伊藤 学蒲原 啓司森田 茂樹
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2014 年 43 巻 6 号 p. 331-335

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抄録
開心術後収縮性心膜炎は稀な疾患であり,診断に難渋することもある.また,手術法もさまざまであり(人工心肺の使用の有無,開胸方法など),術後再発の報告もある.今回,開心術後収縮性心膜炎に対し,体外循環を使用し正中切開アプローチによる心膜切除術を行い良好な結果を得たので報告する.症例は67歳男性.2005年に僧帽弁閉鎖不全症に対し僧帽弁形成術を受けた.2010年1月より易疲労感を自覚し,下腿浮腫も認め内科的加療を受けていた.2012年7月より倦怠感が増悪し,精査を施行した.心エコーでは特徴的所見がなかったが,CT・MRIで右室前面~左室全周の心膜肥厚を認めた.両心カテーテル検査では右室拡張期圧波形のdip and plateauがあり,両心室の拡張末期圧が呼気・吸気時にほぼ等しかった.以上の所見より収縮性心膜炎と診断し手術を行った.手術は再胸骨正中切開で,人工心肺を使用し心拍動下に施行した.ほぼ完全に心膜を切除した.横隔神経の損傷を避けるため,左胸膜を切開し左胸腔より直視下に横隔神経を確認し心膜を一部温存した.心外膜との強い癒着が認められた左室前壁基部は心膜を残しwaffle procedureを追加した.心係数は術前1.5 l/min/m2 から術後2.7 l/min/m2 まで改善し,中心静脈圧も術前17 mmHgから術後10 mmHgまで改善した.術後,両心カテーテル検査でdip and plateauは消失,拡張障害は改善した.開心術後収縮性心膜炎の治療には胸骨正中切開で人工心肺を使用し,可能な限り心膜を切除することが望ましい.
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