抄録
症例は3カ月男児,左心低形成症候群と胎児診断され,36週6日2,115 gで出生し当院を紹介され,4生日に両側肺動脈絞扼術を施行,2カ月時,体重3.2 kgでノーウッドグレン手術を行った.術後循環呼吸状態は落ち着いており,術後6日目に人工呼吸器より離脱,肺動脈圧も10 mmHg程度で経過していたが,術後10日目より感染を契機にグレン循環が破綻,全身管理を行うも改善せず,術後13日目にグレン吻合解除および右BTシャント術を施行した.術中より肺出血を認め,術中,術後頻回の気管内吸引,高気道内圧での人工呼吸器管理を必要とした.再手術後8日目より気胸が出現し,ドレナージを行うも改善せず,再手術後32日目に自己血注入による胸膜癒着術を施行,34日目にも自己血量を増量し胸膜癒着術を行い気胸は改善した.気胸の改善とともに呼吸状態も改善を認め,再手術後70日目人工呼吸器より離脱できた.自己血による胸膜癒着療法は,乳児期早期の心臓開心術後に生じた持続性難治性気胸に対して有用な方法と考えられた.