日本心臓血管外科学会雑誌
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原著
腹部ステントグラフト内挿術における血中 D-dimer , FDP 測定の有用性
水本 雅弘内田 徹郎五味 聖吾浜崎 安純黒田 吉則山下 淳林 潤廣岡 秀人安本 匠貞弘 光章
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2015 年 44 巻 6 号 p. 301-306

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抄録

[背景・目的]腹部ステントグラフト内挿術(EVAR)における術後のエンドリーク(EL)マーカーは確立されておらず,その報告も少ない.EVARにおいて血中D-dimer, FDPがELマーカーとなりうるか検討した.[対象・方法]2011年6月から2014年1月,当科で施行した連続EVAR 65例のうち,10例を除外した55例を対象とした.術前および術後の定期的な造影CTに併せて採血検査(D-dimer,FDP,PT,APTT,血小板)を行った.造影CTからELおよび動脈瘤最大短径を評価し,瘤径3 mm以上の変動を有意とした.EVAR術後12カ月時点における55例をEL残存群26例-非残存群29例にわけて検討した.さらに瘤径不変34例-縮小群21例の検討も追加した.[結果]ELはすべてtype IIであり,手術および瘤関連死亡,追加治療症例は認めなかった.EL比較では残存群においてD-dimer,FDPが非残存群と比べて有意に高値を示した.また,血小板が残存群で有意に低値を示した.PT,APTTでは有意差を認めなかった.瘤径比較では瘤径不変群が縮小群と比べてD-dimer,FDPが高い傾向を示した.また,血小板においても瘤径不変群で低い傾向を示した.PT,APTTでは有意差を認めなかった.[結語]EVARにおいて血中D-dimer,FDPはエンドリークマーカーとして有用性があると考える.

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