2015 年 44 巻 6 号 p. 322-325
症例は75歳男性.膀胱癌に対して経尿道的腫瘍摘出術を行った後,BCG膀胱内注入療法を4クール行った.4クール目のときに発熱があり,本療法を中止した.このとき撮影したCTで大きさ46 mmの不整形をした左内腸骨動脈仮性瘤を認めた.尿管や左外腸骨および総腸骨静脈への仮性瘤による浸潤圧迫が認められ,瘤径の拡大が急速であるため,緊急手術を行った.術前に一時IVCフィルターおよび尿管ステントを留置したうえで,大腿-大腿動脈交差バイパス術で血行再建を行った後,左総腸骨動脈と左外腸骨動脈を閉鎖し,仮性瘤切除を行った.術前から術後10カ月までイソニアジド,リファンピシン,エタンブトールによる抗結核療法を行った結果,感染の再燃はなく,術後2年10カ月目のCTでは仮性瘤の再発を認めなかった.BCG膀胱内注入療法による稀な感染性腸骨仮性動脈瘤を経験した.術前にあらかじめ留置した尿管ステントは骨盤内での高度癒着が予想される本症例において有用であった.