2022 年 51 巻 4 号 p. 225-230
僧帽弁置換術後遠隔期にみとめられた,機械弁不全の2症例に対し(症例1:84歳男性.症例2:67歳女性),再手術として顕微鏡補助下で右小開胸MICS-MVRを施行した.2例とも心嚢内の癒着は高度であったが,双眼顕微鏡を用いて視野確保を確実に行い,大動脈基部周囲および右側左房切開部など必要最小限の剥離を慎重に行った.機械弁の除去および再弁置換についても,顕微鏡下に行い,必要以上の組織損傷を避けて確実かつ安全な操作を続けた.2例とも想定外の出血はみられず,術後経過も良好で,無輸血・無合併症で早期の自宅退院となった.再手術症例については一般に,組織損傷や出血のリスクと輸血量の増多,侵襲増大が課題となる.顕微鏡補助下右小開胸MICSは,胸骨再正中切開による再手術と比較しても,剥離をかなり小範囲内に抑えつつ,良好な術野を確保でき,解像度が高く鮮明な画像で器官・組織を確認しながら操作を行える点で,安全かつ有用な方法であると考えられる.