日本心臓血管外科学会雑誌
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[大血管]
左椎骨動脈の弓部大動脈直接起始例における胸部大動脈ステントグラフト治療の3症例:対麻痺予防策
荒井 岳史高木 大地和田 卓也五十嵐 至山崎 友也五十嵐 亘角浜 孝行山本 浩史
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2022 年 51 巻 4 号 p. 240-244

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抄録

胸部大動脈ステントグラフト内挿術(TEVAR; thoracic endovascular aneurysm repair)の最大の合併症の1つである対麻痺の予防に,椎骨脳底動脈の血流を維持する左鎖骨下動脈再建の有効性が報告されている.左椎骨動脈は3.1~8.3%の症例で弓部大動脈から直接起始するが(ILVA),このILVA再建の方法やその必要性に関する報告はきわめて少ない.ILVAを有する大動脈解離に対し,Zone 2 landingを要するTEVAR,ILVA再建,左総頸動脈-左鎖骨下動脈バイパスを行った3例を報告する.ILVAはそれぞれ4.2,2.3,2.2 mmであり,すべての症例で右側椎骨動脈(RVA)が優位だった.ILVAが4.2 mmおよび2.3 mmの症例1,2で,ILVAを左総頸動脈に直接吻合したが,症例2でILVAの閉塞と循環動態に依存する不全対麻痺を認めた.ILVAが2.2 mmだった症例3は,ILVAとバイパス人工血管間にSVGをinterposeし再建した.術後ILVAは開存し,対麻痺は認めなかった.RVAが優位であってもILVAの閉塞が対麻痺の原因となる可能性がある.確実な再建のため,ILVAの位置や太さに応じて左総頸動脈への直接吻合やSVGでのinterposeなどの方法を選択する必要がある.

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