日本心臓血管外科学会雑誌
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原著
張力固定型チタンケーブルとメッシュプレートを併用した胸骨固定法の検討
檜垣 知秀黒部 裕嗣福西 琢真坂上 倫久西村 隆泉谷 裕則
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2024 年 53 巻 2 号 p. 56-61

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抄録

[背景と目的]胸骨正中切開後の不安定な胸骨固定は,感染症・出血のリスク増加や胸骨動揺に伴う疼痛等によるリハビリテーションの遅れなど,術後の経過に影響を与える要因の1つとしてあげられる.従来のワイヤー固定法では,経験年数にも左右されるが,閉胸時の胸骨離断やワイヤーの不完全固定など懸念としてあげられてきた.一方で,近年使用されてきた体内固定用胸骨プレートはその患者適応に制限があり,全例で使うことはむずかしい.今回,より安定した胸骨固定を目的に,チタンケーブルとメッシュプレートを併用した新固定法(N群)の手技を検討し,従来のワイヤーのみを用いた胸骨固定法(O群)と比較検討した.[方法・結果]2020年8月~2023年4月に施行した成人開心術のうち,術後CTを撮影した155例を対象とし,N群(86例:M 65,F 21),O群(69例:M 50,F 19)に分類した.術前因子としては,術時年齢(N群:O群=68.4±10.6 : 69.6±11.5歳(p=0.25)),BMI(N群:O群=23.0±3.7 : 24.1±7.7(p=0.16)),HbA1c(N群:O群=6.3±1.1:8.0±10.3 %(p=0.10))であり,両群間で有意差はなかった.術後CT解析では,第3肋骨位での術後の胸骨のずれを測定した.横ずれ(N群:O群=0.22±0.73:0.83±1.08 mm(p=0.005))は有意に減少し,縦ずれ(N群:O群=0.53±0.86:0.72±1.14 mm(p=0.13))は統計学的有意差を認めないものの減少傾向を認めた.[結語]チタンケーブルとメッシュプレートを併用した閉胸法は,術後の胸骨ずれを減少させ,その結果,安定した胸骨固定に寄与すると考えられる.チタンケーブルの固定手技は,テンショナーを用いた一定力で胸骨固定できる一方で,胸骨カッティングの懸念を指摘されていた.そのためメッシュプレートを胸骨背面に挿入して固定することにより,胸骨カッティングを防止し,より安定した胸骨固定に繋がると考えられた.

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